縁の下の力持ち
2015年 07月 19日
7月17日(金)は台風11号が日本に上陸する中、祇園祭の鉾巡行が開催された。
鉾巡行での見せ場である、辻回しで竹が使用されることを知り、どうしても近くでみたいと思っていた。
そこで、鉾巡行で綱をひく 曳子(ひきこ)になることを志願し、その夢がかなった。
しかも、大雨のおまけつきであった。
四条烏丸付近からスタートして、四条河原町で第一の辻回しがおこなわれる。
四条通りですでに息があがっていたのだが、辻回しの際には息をととのえて、
その作業をまじかでみることができた。たいてい鉾は4輪になっているのだが、
その前輪2本を平らに敷き詰めた竹のすだれ状の上にのせ、その上に水をかけ、
斜め方向に滑らせるのだ。木でつくられて車輪は竹の上ですべり、10トン以上の鉾が、
20度から30度づつ左方向に上滑りしていくのだ、もちろんその原動力となるのが、綱を曳く我々曳き子の人力である。
掛け声に合わせ、みなで息をあわせ綱を曳く。これが難しい。みなが、一体となってはじめて鉾が動くのだ。
アスファルトに平たくされた竹材が敷き詰められ、その上に鉾の車輪がのり、車方(くるまがた)とよばれる黒い装束のいなせな男衆が鉾が回る方向に竹材を置く、我々、曳き子たちはその作業を見守る。用意がかかると車方の親方が鉾の上にいる大工方(だいくがた)に合図し、拍子をとる。2本の綱は斜めにのばされ、2本の大きな綱を曳き子たちは我々は二手にわかれ、その拍子に合わせ、一斉に声をあわせて曳くのだ。車方は後輪をロックして、鉾が思うように向きを変えるように力をこめる。すべてが一体化しないと鉾はびくとせず、滑ることはない。「からぶりや。」男たちがどなる。「しっかり力入れてひかんか!」祭り特有の高揚感の中で曳く側にも気合が入る。再度、拍子がとられる。「行くぞぉ!!」綱をもつ我々の手に力入る。
足を使い腰を入れて一斉にひく、するとどうだろう、先ほどまで微動だにしなかった鉾が、あっさりと滑りだした。曳いた綱の感覚を覚えている。一斉に曳くと竹にすべる車輪の動きがするすると気持ちが良い。野球やゴルフの経験者にはわかってもらえるだろうか?ジャストミートやインパクトの瞬間のときバットやクラブをとおして、軽く抜けるような感覚が手に伝わる。逆にインパクトがうまくできない場合は鈍く抜けきらない重みが手に感じられるような感覚と似ている。うまく辻回しをすると曳き子自身も気持ちよく、鉾全体に一体感がでる。それを実際に曳くことにより実感できたのは本当によかった。鉾の車輪が竹の上を滑るその動きが綱をもつ手につたわってくるのである。竹の特性を体で感じることができたのである。雨の中 竹ほより青々として、その役割を果たしていた。
華やかな祭りのなかで、それを実感することができる者は縁の下の力持ちだけである。
感謝
莞鳴