京都五代目 たけのこ見聞録 その1
2017年 04月 24日
今でこそ外国のお客様が京都まで足を運んで頂き、竹の道を観光し、竹の子料理を召し上がって頂いておりますが、戦後、アメリカの駐留軍の将校に喜んでもらおうと晩餐会で竹の子料理を出したときに、喜ばれるどころか「竹を食べさせられた!」とクレームがあったそうです。当時、欧米では竹自体に馴染みがなく、竹の子を目にされたこともなかったからでしょう。
竹の子が食用で、美味しくいただけることをアジアの国の方なら皆さんよくご存知です。中華料理やラーメンの具材などにみかけますよね。でも、竹の子の種類や栄養分の知識はいかがでしょうか?胸をはって明解にお答えなれる方はどれくらいおられますか?実は私も胸をはることはできませんでした。いろいろな大学の先生方に教えを乞い、御教示いただいた経緯がございます。
まず、竹の子の種類ですが、国内の流通しているほとんどが孟宗竹(モウソウチク)という種の竹の子です。ちなみにこの孟宗竹は外来種の竹で中国から日本へ海を渡りはいってきたものです。入ってきた時期は所説ありますが、孟宗竹は明治時代以降、食用竹として推奨され、九州や四国、太平洋側を中心に温暖なエリアで増加してきました。この孟宗竹は他の種の竹より寒さに強く、九州では11月から竹の子がでて、春に最盛期を迎え、京都では3月から5月の終りごろまで竹の子をだしていきます。あと食用では初夏に竹の子をはやす、淡竹(ハチク)や真竹(マダケ)などがあります。後者の真竹は食用というよりは竹材としての価値があり、あまり一般には出回りませんので、食用としては紹介されないことが多いようです。また、山菜として有名なネマガリダケ(チシマザサ)も笹属ですが、食用竹の子の種類です。信州では姫竹とも呼ばれます。あと、最近、台湾から入ってきた緑竹(リョクチク)など鹿児島エリアで栽培されています。とても甘みの強いものです。秋にでる竹の子として珍しい四方竹(シホウチク)などもあります。海外の竹の子で馴染みのあるラーメンの具のメンマは中国の麻竹(アサチク)を原料にしております。そのほか希少種の国内竹の子も数種ありますが、食用として全国の食卓に出回るものはほとんどありません。
食用竹の子の生産量に関しては孟宗竹の独壇場ですが、この孟宗竹の同種の竹の子でも栽培されたものと非栽培のものがあります。東京の高級デパートで売り出される京都の白子と呼ばれるものは京都式軟化栽培によって大事に栽培、生産されたものです。ここでいう栽培物とは竹藪ではなく竹の子畑と呼べる竹林で、施料、除草、シンとめ、古い竹の間伐や土壌への敷き藁や葉をし、客土(土入れ)などをして管理され、出荷されたものです。竹の子畑からとれた竹の子は肥沃な土壌から栄養分を吸収し、甘みが強く、苦味がなく、柔らかく非栽培の竹の子より高価に流通、販売されています。また、同じ竹の子畑からとれたものでも、時期や雨などの天候や環境により大きさや形状や硬さや甘味など個体差があります。前述の「白子」は天候・土壌、・栽培管理の3拍子揃った奇跡の竹の子と呼んでもよいものです。だから、大事にされて高値で求められるのです。
つづく